松井先生コアミクロの補足:UMPとEMPについて去年やりたかったこと。

この記事では、UMPやEMPのKKT条件を用いた解き方について去年コアミクロを勉強した時に知っておきたかったことを書いてみる。というより、「日本語できる人はWIISを絶対見るといいよ!」という情報を伝えるために書いている。

僕は、コアミクロについて留学生の家庭教師をしているのだけど、やっぱりKKT条件を使いこなすのがコアミクロをクリアするのに最重要だと思う。でも英語だとどの教材を紹介すればいいのか分からなくて困っている。対して日本語ができる人はWIIS(https://wiis.info/economics/)に素晴らしい教材があるのでこれを使わない手はないと思う。

この記事ではWIISで(UMPとEMPにおける)KKT条件について勉強するの人のために、自分が当時知っておきたかった情報を書いておく。

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まず前提として、コアミクロを突破する上で必須のテクニックとして、効用最大化問題と費用最小化問題をしっかりと解けるようになる必要がある(効用関数によっては使わないこともあるがKKT条件を使い倒せるようになる必要がある)。これは避けては通れないので避けようとしてはダメ。

そのためにはTAさんの解説を理解しようとするのも大事だが、TAセッションではさすがに全部を丁寧に説明するのは厳しいだろうから、他の教科書やwebページをあたることになると思う。そこでWIISのミクロ経済学のところの効用最大化と費用最小化について勉強するのが良いと思う。好みにもよるが、過去の自分にアドバイスをするならばMWGなど他の教科書やネットに落ちているどこかの大学の講義ノートなどには手を出さないことを強く勧める。去年の自分はこの選択を間違えたが、TAさんの資料(2年分くらい)とWIISに集中するべきだった。WIISを丸2〜3日、TAさんの資料を丸2日くらいかけて勉強する必要があることを考えると、他の教科書を参照しようとすると時間的に終わる。また教科書によってはUMPやEMPよりももっと一般的な問題だけを扱っていたりするので、理解は深まるがコアミクロを突破するには向かない。TAの資料も年によってはより一般的な問題を扱っているかもしれないが、結局はUMPとEMPの文脈においてKKTを使いこなせることが重要なので、それを意識しながら勉強するのが良いと思う(最終目標はあくまでUMPとEMPの回答作成手順を身につけること)。

なお、KKTの勉強はあまりに早くからやる必要はないとは思う。というのもWIISとTAさんの資料で少しスタイルが違うような箇所もあるので、経ため数などで数学の力や勉強法を身につけたからの方が勉強しやすい。また念のため言っておくと、「TAさんの資料とWIISで勉強するのがおすすめ」と先ほど書いたように「WIISだけで勉強する」のはあまり良くないと思う。WIISでは重視されないがコアミクロでは重視される部分はあるので、違いに注意しながら(定式化や用語の違いなどにも注意しながら)両方を勉強した上で、自分なりの回答作成手順を作るのが良いと思われる。

最後に去年の勉強会でまとめた板書を貼っておく。これが去年事前に手に入っていたら助かったと思う。これだけ読んでも分からないとは思うが、最終的にどんなかんじに整理すればいいかを先に理解しておくと勉強がスムーズにいくと思う(もちろん凹性のチェックの仕方など他にも必要な事項はあるが、僕たちの勉強会では大枠を以下の板書のように整理した)。


板書はEMP(費用最小化問題)とUMP(効用最大化問題)に分かれていて、どちらも2財のモデルを考えている(コアミクロで聞かれるのが基本的に2財だから)。またどちらの問題においても価格は正を仮定しており、UMPの収入も正で、EMPの効用水準(これ以上の効用水準を達成してという水準)についてはu(0,0)より大きくて実現可能な範囲を超えないようにしてある(supで押さえているのが実現可能な範囲を超えないでという意味だがutilityのmaxとsupが一致している場合にはsupのところは開区間っぽくではなく閉区間っぽくしておくべきなのでこの表記はあまり厳密ではない。下をu(0,0)で押さえているのはこれ以下の場合には考えるまでもなく(0,0)が解になるからである)。UMPもEMPもコアミクロに合わせて扱いやすい形にセットアップしてある。

内容について大事なのはEMPにしてもUMPにしても最初のところである。すなわち、Utility Funcionがどの条件を満たしているときに「KKT条件が必要条件」になるのか「KKT条件が必要十分条件」になるのか、「KKT条件が必要十分条件になり、かつ解が一意である」までいえるかの整理である。C^1と書いてあるのはUtility functionがC^1級という意味で、St凹はUtility functionがStrictly Concaveということ。例えばUMPのところで「C^1 \ \land 凹:KKT必要十分条件」と書いてあるのは、Utility FunctionがC^1級で凹である場合にはKKTの諸条件は最大化問題の解になることの必要十分条件になることを意味している(ただし解が一意かは分からない)。EMPの3番目のところは「Utility FunctionがC^1級で、かつ、解をx^*としたときにx^*が条件式の部分を満たすことが分かっている場合には、KKTは必要条件になる」という意味である。なお、この板書においてはConstraint Qualificationもちゃんと考慮している。

解いている問題が3パターンのどれなのかによって手順が変わってくるので(やるべき作業が変わってくるので)この整理を飛ばすことはできない。KKTが必要十分かつ、解が一意」までいえている場合にはKKT条件を満たすベクトルを1つ見つければそれで問題は解けるため手順としては楽であり、「KKTが必要十分」までの場合にはもう少し面倒でKKT条件を満たすベクトルを全部見つけ出す必要がある(KKTを満たすベクトルを1つ見つけたからと言って他にないとは言えないため全部の場合分けについて考えて全て見つけ出す必要がある)。しかし全部見つけ出したらそれらのベクトルは全部解になるのでそれで問題は解けたことになる。対して「KKTが必要条件」までの場合には、1つ前のケースと同じようにKKTを満たすベクトルを全部探し出した上で、今回はそのベクトルについてどれが解になっているかの吟味までする作業もする必要が出てくる。WIISの素晴らしいところはそれぞれのパターンについてその解き方の具体例が載っているところだと思う(この3パターンに対応して整理していたかは忘れたが、何かしらの整理をしてくれていたはず)。この3パターンがそれぞれどういう意味なのかをちゃんと理解して、各パターンにおける解き方の手順を理解しておくのは非常に大事。もっといえばそれさえできれば、後は箇条書きのところのテクニックの使い方を覚えるだけなので大枠はクリアできたことになる。

星のマークになっているところは、UMPについては、Utility functiongがcontinuousだと需要対応(Demand Correspondence)が非空値を取らないといえて、Utility functionがcontinuousかつSt凹だと需要関数が存在することがいえる、と書いてある。EMPについても同じようなことが書いてある。その下の箇条書きについてはKKT条件を簡単にするためのテクニックが書いてある(このテクニックが使える場合にはKKT条件をフルで持ってくるのではなくてある程度簡単にして持ってくることができる)。

重要度でいえば最初の部分が一番大事で、次に箇条書きのところが大事で、星マークのところはあまり重要ではない(が理解を深めるためには重要である)。

もちろんこの板書だけ見ても意味はないのでWIISやTAさんの資料を見ながら(場合によってはこの板書とは違う形で)自分で整理してみるのがおすすめ。あと、最後に1点だけあるとすればコアミクロの問題によっては「内点解を仮定して良い」と言われることもあるが、内点解を仮定しないやり方を身につけておいて、その上で仮定して良い時にはどう手順を簡略化できるのか理解するのがおすすめ。

Fin.

 

*褒めすぎな気がするので念の為書いておくと、僕はWIISの運営とは関係はないです。またWIISは課金もできるサービスですが、課金しなくても今回の勉強には支障ないはずです。