松井先生コアミクロの補足:TransitivityがQuasi-transitivityをimplyすることの証明。

現在やっているコアミクロの家庭教師の方針として、宿題1を丁寧に理解することに。

最近宿題1の回答が出たので見てみると、LemmaとしてTransitivityがQuasi-transitivityをimplyすることなどの証明が乗っており、たしかにこれは重要だなと思った(内容としても重要だし今度のコアミクロの証明をやる上でも重要だと思った)。そこで来週の家庭教師はこの証明をちゃんと追う時間にすることに。そのための準備もかねてこの記事では、

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X上の選好\succeqがTransitivityを満たすとする。

このとき、
(1)\forall x,y,z\in X  x\succ y\ \land\  y \succ z \Rightarrow x\succ z
(2)\forall x,y,z\in X  x\sim y\ \land\  y \sim z \Rightarrow x\sim z

が成り立つ。

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の証明をTAさんの資料より丁寧にやってみようと思う。やりすぎなくらい丁寧にするつもりだけど、たぶん去年の自分は一回は丁寧な証明を見ておきたかったと思うので書いてみる。

なお(1)の条件はQuasi-transitivityと呼ばれるので、この記事のタイトルは「TransitivityがQuasi-transitivityをimplyすることの証明」にしてみた。

まずは簡単な(2)から証明してみる。

Proof of (2):

Transitivityを満たすX上の選好\succeqについて考える。

まずは任意にx,y,z\in Xを取ってくる。

いま任意に取ってきたx,y,z\in Xについて、

 x\sim y\ \land\  y \sim z \Rightarrow x\sim z

が成り立っていることを示したい。

(case i) x\sim y\ \land\  y \sim zが成り立っていない場合。

この場合には、x\sim y\ \land\  y \sim z \Rightarrow x\sim zは明らかに成り立つ(\Rightarrowがどういうものか思い出せば分かる)。

(case ii) x\sim y\ \land\  y \sim zが成り立っている場合。

この場合には、あとはx\sim zを示せばx\sim y\ \land\  y \sim z \Rightarrow x\sim zを示せることになる。つまり、x\succeq zz\succeq xを示せば良い(無差別の定義を思い出す)。

まずはx\succeq zを示す。これについては、x\sim y\ \land\  y \sim zが成り立っていることからx \succeq y\  \land\ y\succeq zも成り立つので、Transitivityよりx\succeq zも成り立つことになる。

次にz\succeq xを示す。これについては、x\sim y\ \land\  y \sim zが成り立っていることからz \succeq y\  \land\ y\succeq xも成り立つので、Transitivityよりz\succeq xも成り立つことになる。

よってx\sim zが示された(これで(case ii)についてもx\sim y\ \land\  y \sim z \Rightarrow x\sim zが成り立つことが示された)。

以上より、最初に任意に取ってきたx,y,z\in Xについて x\sim y\ \land\  y \sim z \Rightarrow x\sim zが成り立つことが分かり証明終了。

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なお実際には、(case i)の方は特に何も考える必要がないので、いまからやる証明のように最初から(case ii)の方だけを考えてしまえば良いことになる。

(1)の証明を見てみる。

Proof of (1):

Transitivityを満たすX上の選好\succeqについて考える。

まずは任意にx,y,z\in X(ただし x\succ y\ \land\  y \succ zを満たす)を取ってくる。

このx,y,z\in Xについて x\succ y\ \land\  y \succ z \Rightarrow x\succ zが成り立つことを示せばよい。ということは、x\succ zを示せば良い( x\succ y\ \land\  y \succ zが成り立つと想定しているから)。

よって、x\succeq z\lnot\ z\succeq xを示せば良い。

まずはx\succeq zを示す。これについては、 x\succ y\ \land\  y \succ z が成り立っていることから、x\succeq y\ \land\  y \succeq z が成り立つので、Transitivityより示せる。

次に\lnot\ z\succeq xを示す。これは背理法で示すために、\lnot\ z\succeq xの否定を仮定する。つまり、z\succeq xを仮定する*1。すると、 x\succ y\ \land\  y \succ z が成り立っていることからx\succeq yが成り立つため、推移性よりz\succeq yが得られる(z\succeq xx\succeq yより)。しかし同時にx\succ y\ \land\  y \succ z が成り立っていることから\lnot z\succeq yも得られるので、これは矛盾。よって\lnot\ z\succeq xが示された。

以上より最初に任意で取ってきたx,y,z\in X(ただし x\succ y\ \land\  y \succ zを満たす)について、x\succ y\ \land\  y \succ z \Rightarrow x\succ zが成り立つことが分かり証明終了。

Fin.

*1:正確にいえば、仮定するのは\lnot\  \lnot\ z\succeq xであるが、これを仮定するということは要はz\succeq xを仮定するということである