「編集者の工夫をもっと聞いてみたい!」と思うことが多いです。



前から楽しみにしていた行動経済学の本がそろそろ出版されるらしい。そこでネット上で公開されている表紙を見てみた。

www.nippyo.co.jp



「電球」がドンと中央に置いてあるデザイン。

で、これを見た時に思ったのだけど(今日の本題はこの本そのものについてではないです)、

 

え、なんで電球なんだろう?

行動経済学と電球って何か繋がりがある?

きっと何か意図があるはず、気になる。

 

そう思いました。



僕は普段から本の編集者の人と交流する機会が多くて、彼らが著者やデザイナーと協力しながら、11冊を丁寧に色々な工夫をこらして作っていることを(普通の人以上には)知っています。

フォントをどうするか、紙質をどうするか、複数あるデザイン案のうちどれを採用するか、注釈はどうつけるのがその本に合っているのか、(手が小さい傾向にある)女性にも読んでもらいたい本だから一般的にはこのくらいのサイズにすることが多いジャンルだけど女性が片手で持てるサイズにしておこう、など工夫がたくさんあるはず。

そしてそれら11つがとても奥深いし面白い。

今回の行動経済学の本にしても「なんであえて電球を選んだのか」の説明(や他の工夫の説明)をいいかんじの意図とともに伝えてくれたら本への愛着がもっとわくだろうなと思います(僕についていえば、最近ちょっと本を書いすぎておりすぐにこの本を買うのは躊躇しているのですがその意思決定も変わるかもしれません)。

 

編集者の熱意や工夫はせっかくその本の魅力の1つになり得るのにそれを伝えないのは、少しもったいないような気がします。



色々な情報が溢れているこの時代。編集者の丁寧に編集する技術とマインドの価値は高まるでしょうし(というか情報を届けるだけの価値は減る気がしますし)、編集者の人たちからもそこが価値だと思っているという声を聞きます。

愛着を持ってもらうという意味だけではなくこの時代における出版社•編集者の意義を社会に伝えるその意味からも、編集者が著者やデザイナーと一緒に話し合って決めた細かい工夫をもう少し前に出すことは大切ではないかと思います。普通に本を買っているだけの人からすると「著者が本を書いている」というイメージしかないはずなので。

 

「本の出版社の仕事ってなんだと思う?」と聞いたときに「え、そりゃ本を出版することでしょ」となっている現状の社会の認識を変えることは、目の前の本にどう愛着を持ってもらうかという視点と同じくらい出版社にとって(直接的な影響は見えづらいとしても)大事なのではないかと思います。



少し話が変わりますが、特に紙の本については、kindle本などよりも「愛着」が湧きやすいと思うので、工夫を伝えること以外の観点からもいくつか「愛着」に関する打ち手を考えるのはありかなと思っています(初版の本には全部にサインをつけるみたいな打ち手をとる出版社が出てきてもいい気もしています。それ単体の打ち手だと露骨すぎて品がないように思われるかもしれないけど、「サイン本に限らず紙の本はどれも特別なものです」という意図をもった他の打ち手と組み合わせるとなしではないかなと思います)。



まとめると、

・一人の本好きとして、(紙の本でもkindle本でも)編集者の細かい工夫、本の制作過程であった議論、具体的な編集の例などについてもっと聞いてみたいと思っています。そうするとより愛着が湧きそう。

・今後の出版社のあり方として、丁寧に本を編集してそのことをちゃんと伝えるのは情報が溢れるこの時代において大事だと思います。

・特に紙の本は「愛着」を持ってもらいやすいので、編集者の工夫を伝える以外にもその観点でこれまでにない打ち手を検討するのは大事そう。

と思ったという話でした。いつも新しい本を見るときに「もっと隠された工夫について教えてほしい」と思っていたので、この機会に書いてみました。10年後や20年後の出版社はどういう形になっているんだろう〜。


Fin.