2022-01-01から1年間の記事一覧

「ルワンダ中央銀行総裁日記」を読んですごく良かった。

前に数十ページだけ読んでそのままにしていた「ルワンダ中央銀行総裁日記」を気合を入れて読んでみた。新書ではあるが濃度が半端なくて読むのは大変であったが、3日間に分けて読破した。この記事では本書の魅力、思ったこと・考えたことなどをまとめてみる。…

帰納法を用いたアローの不可能性定理の証明

このブログではこれまでアローの不可能性定理の証明を3パターン扱ってきましたが(例えばExtremal Lemmaを使った証明はこちら:アローの不可能性定理の証明)、 帰納法を用いた証明は取り上げてきませんでした。ただ、やっぱり帰納法を使った証明も捨てがた…

数学に期待することしないこと。

YouTubeのレコメンドに数学の動画が出てきたときにふと気づいたのだけど、最近数学に「神秘性」みたいなものを期待しなくなってきたかもしれない。 「へー、こんな美しい数学的性質があるんだ!数学って不思議な世界だなぁ」 みたいな魅力を以前はよく感じて…

大学院に行くごとに同じ場所から写真を撮ってみました。

去年(2021年)の12月頃にふと思いついて大学院に行くごとに写真を撮ることにしました。・・授業がオンラインだったり、違う駅から登校する日などもありましたが、この1年間で88枚になりました。・・2021年12月〜2022年12月の変化をどうぞ! Fin.

SFCの周辺が自然豊かでいいかんじでした〜。

前の記事(SFCに向かう電車の中で気づいた教科書の読み方の変化)でも書いた通り、今日は母校である慶応大学SFC(湘南藤沢キャンパス)に行ってきました。SFCはこんなかんじ。 普段は芝生がもっと青くて綺麗なんですけどね〜。とはいえ、やっぱりいいかんじ…

SFCに向かう電車の中で気づいた教科書の読み方の変化。

今日は近くに用事があったので、久しぶりに母校である慶応大学SFC(湘南藤沢キャンパス)に行ってきました。懐かしいような気もしましたが、最後に行ってから2年は経っていないのでそこまで懐かしくない気もして微妙な気持ちになっていました(ただキャンパ…

nonwelfare informationを明示的に扱う枠組み。

*この記事は社会的選択理論の知識を前提にします。特に、「規範的な議論の2つの枠組み」を事前に読んでいると分かりやすいと思います。 この記事ではBBD(2004, Chap3)に従って、規範的な問題について考えるためのある枠組みを紹介します。今回紹介する枠組…

整体で考えた公平性

「大学院生です」と自己紹介すると、「何の研究しているの?」とたまに聞かれる。こう聞かれると最近は、「公平性の研究をしています」と答えることが多い。人口倫理も研究してるけど、そっちは説明が難しい。・・・今日は筋肉痛が酷くて近所の整体に行って…

人口倫理の不可能性定理の紹介(BBD, 2005: Theorem 5.4)。

*この記事は社会的選択理論の知識を前提とします。「Population Ethicsの紹介」「社会を構成する個人の集合について」あたりを事前に読んで頂けるとスムーズです(特に最初のやつ)。 考える対象は何?社会的選択理論におけるよくある枠組みとして、社会を構成…

書き出しに嫉妬。

ふと手に取った太宰治の短編集。書き出しがどれも上手い、すごく上手い。 小説にせよ新書にせよ普通の本には「書き出し」は1つしかないけど、短編集だと色々な「書き出し」を簡単に見比べられる。どの書き出しも個性的でほんと嫉妬するくらい上手い。まぁ実…

経済学を1日10時間勉強するための魔法の言葉。

経済学の魅力の1つは、社会の問題について考えるための概念を自分たちで自由に構築するところだと思う(これは本当)。そしてそんな経済学を学ぶ大学院生たちが、直面している一番の問題は、「とにかく経済学の勉強をしないといけない」こと。断じてサボっ…

規範的な議論の2つの枠組み

*この記事は社会的選択理論の基本的な知識を前提にします(今回関連してくるのはutilitarianismとアローの不可能性定理あたりです)。今回は枠組み間の整理を行うのでいつもより前提知識は必要かもしれないです。 今回関係を明らかにしたい2つの枠組み 社会…

社会的選択理論のタームペーパーで取り組んだ「Population Ethics」の紹介。

*この記事では、学部上級レベルのミクロ経済学の知識を前提として、僕がタームペーパーで扱った「Population Ethics(人口倫理)」の研究について紹介します。僕のタームペーパーは既存の論文の主張に反例を示して修正を加えた修正論文なので、基本的には分…

「A/Bテスト実践ガイド」のメモ(1章、2章)

効果検証の本として、「A/Bテスト実践ガイド」が良書らしいので勉強してみることに。どこまで読み進めるかは分からないけど、とりあえず先ほど読んでみた1章と2章について、面白いと思ったこと・考えたことなどをメモしておきます。 自分が忘れた頃に見返…

「マーケット感覚を身につけよう」を読んでトレーニング。

数年前に読んで面白く思った本に、ちきりんさんの「マーケット感覚を身につけよう」がある。特に「航空会社の競合ってどこでしょう?」という話が面白かった。例えばJALの競合としてすぐにANAを思いつくかもしれないけど、それだけじゃないよねという話。例…

中学校のベランダとaggregation(集計)

中学校の3年間で一番衝撃だったことは何かと思い返してみると、教室におけるあの場面だったかもしれない。中学一年のときの教室はたしか4階にあった。たぶんあの日は入学してからそこまで日が経っていなかったんじゃないかな、休み時間に教室のベランダで…

データ分析(計量経済学)の教育について思うこと。

例えば、あなたは全国展開する美容院(ただしその企業は他の事業も展開している)のデータ整備を担当することになったとする。具体的には、関東にある50店舗を総合的にマネジメントをしている担当者のために、データを揃えることになったとする(データを揃…

学問に対する向き合い方のシフト

M2になってから意識的に学問に対しての向き合い方を変えてきて、なかなか難しさもあったけど、新しいステップに入った気がするのでそれについて書いてみようと思います。ただ、以前にも大きく向き合い方が変わった瞬間があって、今回の変化を語る上ではそこ…

社会的選択理論の研究について教わったことメモ

*この記事は中級以上の社会的選択理論の知識を前提とします。指導教員とのミーティングなどで「あ、これは学びになるな」と思ったことをメモしておきます。以下は基本的に手法としてはcharacterizationについてなので、社会的選択理論に馴染みがない(or 不…

修論指導は”映画鑑賞”?

指導教員の先生とのミーティングにおいて、映画を勧めてもらった。社会主義の未来社会を描いた映画で、社会的選択理論のヒントになりそうとのことらしい。さっそく勧められた映画「giver」を見てみた。この記事では、それを見て面白いと思ったことや考えたこ…

同期の修論に向けての発表を大量に聞いて思ったこと。

自分は発表しなかったのだけど、今日は13時開始で大学院同期の修論に関する発表を7つ聞いてきた。お互いに修論に向けての現状について発表しあってコメントや質問をもらおうみたいなかんじで、僕みたいに聞くだけの人も参加しつつ1つの部屋に集まって18時半…

Pazner and Schmeidler(1974)の紹介。

Pazner and Schmeidler(1974)は、無羨望という公平性の概念とパレート効率性という効率性の概念の関係を取りあげた、たった2ページの論文です*1。(純粋交換経済においてはこの2つの概念を満たす配分は常に存在するのですが、)この論文は労働を入れ込んだ経…

economyに対してsetを定めるかorderingを定めるか。

*この記事は社会的選択理論の知識を前提にしています。あるエコノミーが与えられたときに、そのエコノミーにおける配分の集合を、feasibleな配分の集合をとしておく。この設定のもとで、論文によっては上のordering(順序)を考え、論文によってはの部分集合…

「幸せのための経済学」を読んで。

前に読んで挫折した「幸せのための経済学」を読みました。本はこんなかんじでコンパクト。数式は登場せずに社会的選択理論*1における規範寄りのテーマを一通り説明してくれています(ただし正直な感想としては難易度はかなり高くて読みこなすのには一定以上…

ゲーム理論について学部時代に見えていなかったこと(1)

*この記事は中級レベルのゲーム理論の知識を前提としています。規範的な分野を最近やっていることで(あとはゲーム理論の応用分野である租税競争の授業を履修したことで)、ゲーム理論の規範的評価の部分について解像度が上がってきた。例えば標準形ゲームの…

帰り道の空が穏やかだったよ!

「あ、今日の空は穏やかでいいかんじだな」と大学を出たときに思ったので、帰り道(本郷キャンパス〜上野駅)の写真を撮りながら歩いてみました。散歩のお裾分け的な記事です。・・・・ ・経済学研究科の建物を出てすぐのところ。 ・上野公園に入った。この…

ケーキをどう3等分するのが"公平"か?

ある漫画で、「目の前にあるホールケーキを公平に3等分してください」というお題が出されていた(その漫画においては特になんの捻りもなく120度ごとに切るのが正解とされていた)。その漫画(「ケーキが切れない非行少年たち」)は今回の記事とは異なる重要な…

祝!このブログで100記事達成!

昨日の投稿(2022年8月31日)がちょうど100記事目でした。去年の12月から始めたブログなので思ったより早いペースで100記事達成することができました。「読んでるよ!」とメッセージをくれたり、こっそりと読んでくれていた読者の皆さんありがとうございまし…

613号室の猫。

*このブログ初めての小説です!なおタイトルの613号室は東大経研のM1が共同で使うそれなりに大きな部屋で、ここが舞台です。吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。なんでも大きくて赤い門の端でニャーニャー泣いていたこと…

「経済学は一旦全部忘れよう」

大学院の同期には修士が終わっても経済学を続ける人が多い。そして、もしかしたら彼らと一緒に何かしらのテーマについて考えることが将来あるかもしれない。その時には、この記事のタイトルの言葉を伝えたいなと思っている(経済学の観点からの専門的コメン…