if と if and only if

 

*この記事は経済学(や関連分野)で専門書を読み始めたくらいの人を想定読者にしています。

分かってしまうと簡単だけど大学院入って最初の数ヶ月は混乱していたこととして、if と if and  only ifの違いがあります。僕以外の同期でも混乱している人がいましたが、理解できてしまうと当たり前すぎて逆にあまり説明されないみたいなところがあると思うので書いておきたいと思います。

「"if and only if"には"if"だけではなくて"only if"の意味も入っているんだよ」という話だけなら簡単なのですが、定義において出てくる"if"と"if and only if"はどちらを使ってもよくて、定理(補題、命題)において出てくる"if"と"if and only if"は区別すべきものっていうのが分かりづらいなと思っていて、今回はその話です。





定義におけるif と if and only if

例えば、

Definition:
社会的厚生関数F satisfies 匿名性 if (Fの条件)

という場合には、このifはif and only if に変えても同じことで、具体的には

Definition:
社会的厚生関数F satisfies 匿名性 if and only if (Fの条件)

としても大丈夫です。

ifを使ってもif and only ifを使っても「社会的厚生関数F が匿名性を満たすとは、ーーーーということである」という風に概念の定式化を行っているだけです。

定理におけるif と if and only if

これとは対照的に、

Theorem:
社会的厚生関数Fが公理1~4を満たす if and only if (Fの条件)

のように定理(補題、命題)などにおいて出てくる if や if and only ifは区別する必要があります。上の文は「社会的厚生関数Fが公理1~4を満たすと仮定するとFは(Fの条件)を満たす、かつ、社会的厚生関数Fが(Fの条件)を満たすと仮定するとFは公理1~4を満たす」と主張していますが、もしこれを、

Theorem:
社会的厚生関数Fが公理1~4を満たす if (Fの条件)

とすると、「社会的厚生関数Fが(Fの条件)を満たすと仮定するとFは公理1~4を満たす」という違う主張になります。

定理においてはif とif and only if を区別するべきだということは知っていると、定義においても区別すべきなのではないかと勘違いしてしまう可能性があるのがこの話の落とし穴な気がしています。

定義におけるifとif and only if は一点だけ注意あり

以上の内容で基本的には大丈夫だと思うのですが、定義におけるif と if and only ifには一点だけ注意が必要で、

Definition:
関数P is OOO  if  P satisfies A if and only if P satisfies B.

というようになっている場合には、赤字にしたif は最初の例と同じようにif and only if に変えても大丈夫ですが、if and only if は ifに変えてしまっては違う意味になります。

つまり正確にいうと、

「定義の文において、定義の骨格を作っているif(もしくはif and only if) = 『ーーーとはーーーのことである』という構造を与えているif(もしくはif and only if) はif と if and only ifのどちらを使っても『ーーーとはーーーのことである』という構造を与えるだけなので同じだが、定義の文においてもそれ以外のif や if and only if (条件の中に出てくるif やif and only if ) は定理においてと同じように区別して考える必要がある」ということになるかと思います。





僕はこんなかんじに理解しています。これ意外とややこしい気がするんだよね〜。


Fin.