Q:マクロ経済学が苦手です。A:異世界転生をしましょう。



「マクロ経済学」という学問分野がある。経済学の1大分野で、経済成長だとか景気循環だとか経済全体をまるっと扱おうとすることに特徴がある。僕は経済学研究科に所属しているが、どうもマクロ経済学が苦手だ。

経済学の中には、教育を扱う人、医療を扱う人、政治を扱う人など色々な人がいるから、別に「マクロ経済学苦手なんだよね」は珍しくない。

しかし大学院に入ったくらいの時に、「あ、マクロ経済学ってこういう心づもりで学べばいいのか!」とピンとくることがあり、そこから少なくともマクロ経済学を学ぶモチベーションは湧いてきた。

この記事では、今でも苦手意識がある僕がマクロ経済学をちょっと好きになった、その秘訣を公開しようと思う。例えるなら、ピーマンが苦手な人が他のピーマン嫌いの人に「ピーマンってマヨネーズをかけると意外と食べられるよ!」とアドバイスするかんじだ。マクロ経済学が苦手な人の役に立てたら嬉しい。

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では、いきなり結論を。

マクロ経済学と仲良くなるには、異世界転生を想定するのが裏技だ。

これ大真面目。

自分はいつの日か、経済学が存在しない異世界の小さな王国(ギリギリ国全体を見渡せるくらいの砂漠の王国)に飛ばされると想定する。そして、その国の王様に「この国の経済についてアドバイスをくれ」と言われることになる。いつか来るであろうその日のためにマクロ経済学を学ぶのだ。

つまり、「将来私は異世界転生をして王様を助けることになるんだ」と考えながら勉強すると良さそうじゃない?ってわけだ。

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こう考えるようになった背景を説明したい。

マクロ経済学に限らず、「扱っている対象についてイメージがつく」と勉強がしやすいように思う。

だから「最近株価が暴落しているのはなんでだろう」のように、経済に関する日常的な疑問を念頭において勉強するのは結構いいと思うし、僕はそうしようと思ってきた。

しかし、我々が普段接している「経済」は大きすぎると思うのだ。「あなたの目の前には日本経済が広がっています。それを分析するためのツールを勉強してみましょう」と言われても、「いやいや、日本経済なんて大きすぎ。全然イメージ湧かないよ」となってしまう。

僕はそれで困っていた。

そんな時、異世界の王国が出てくる漫画を読んでいて、ひらめいた。「あ、これだ!経済学が存在しない王国への異世界転生だ!自分はそこの王様をマクロ経済学で助けるんだ!」

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目が覚めると僕は異世界に来ていた。

どうやらここは砂漠のようだ。

おっと、あんなところに大きな城壁があるぞ。お、門の前に誰かいるみたいだな。近づいてみるか。

うわ、話しかけてきた。どうやらこの人は王様で、僕が転生してくるのを知っていたみたいだ。

え、なになに?力を貸して欲しいって?

最近、物の値段が高騰していて人々が混乱しているし、お金の発行の方針をどう決めたらいいかさっぱり分からないのか。

あらあら、お困りのようですね。

じゃあ、まずは王宮に案内してくれ。美味しいワインとこの国の料理を食べながら、GDPの話から始めよう。大丈夫大丈夫、GDPが何か知らなくも。いまから一緒にその概念を作っていくから。

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とまぁこんなかんじ。こうなることを想定してマクロ経済学を勉強しておく。

この想定にはいくつかポイントがある。

1)何よりテンションが上がる。

まず何より異世界転生なんてテンションが上がる。これは言わずもがな。

2)ギリギリ見渡せる大きさの国を想定する。

想定するのはこの大きさ。日本みたいな大きすぎる国ではないため、「大きすぎて手に負えないもの」という感覚にはならず、「なんか考えられるかもしれないな」と思える。また小さすぎる国というわけでもないので、やりがいもある。

3)砂漠の中のそれなりに孤立した国を想定する。

多少の貿易はあるが基本的にはその国で経済が回っていることを想定する。こうすると初級レベルのことを勉強するときにはやりやすいと思う。実際の日本経済では世界の相互依存関係などが関係してきてややこしいと思う。

4)経済学がない世界を想定する。

経済学がない世界においては、自分が授業で学んだ知識はすべて最先端。現実においては初級レベルのマクロ経済学を学んだところで、誰にも驚かれないし感謝もされないが、異世界においてなら1つ1つの知識がその国にとって貴重なものになる。ただその反面、すべてゼロベースで説明できるようなる必要もある。場合によっては「経済」という概念から作る必要もあるため、モチベーションと緊張感を持って勉強に取り組める。

5)王様への指南を想定する。

王様は甘くない。なにせその国の人たちの命運を握っているからだ。そのため「思考実験としてこの定理って面白そうじゃないですか?」みたいなのばかりでは許されない。普段の学習において疎かにしがちな政策的インプリケーションにもしっかりと目がいくようになる。


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どうでしょうか??意外とよくないですか??

マクロ経済学が苦手、かつ、実際の経済についてイメージを持てていない人が、マクロ経済学を学ぶときに採用する1つのスタンスとしてありかなと思います。

「いつの日か自分は異世界転生をして、マクロ経済学で、ギリギリ全体が見渡せるくらいの大きさの国の王様を助けることになる。その国には経済学という概念はないためゼロベースで説明する必要があるが、ちゃんと説明できたときの影響は大きい」


とまぁ、僕はこんなかんじにモチベーションを保ってマクロ経済学をなんとかやっています。この裏技が、ピーマン(マクロ経済学)が苦手な人にとってのマヨネーズとなりますように。

Fin.