「5年後に政府から10万円に交換してもらえる券」があったとして、それが現時点で30万円で買えるとしたら(知人からもらえるとしたら)、あなたはその券を買いますか?
この質問をされたら、
普通に考えたら「買う意味が分からない」と答えるだろう。
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何も難しいことはないはずだ。普通に考えたら30万円を失って5年後の10万円を取るのは馬鹿げている(たぶん皆さんもそう答えるのでは?)。*1
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でも仮に、
その券が、ある場所において現在20万円で取引されていて、半年前は10万円で取引されていて、どうやら半年後にはかなりの確率で40万円で取引されそうであったなら?
こういう状況ならば、買うのもありではないだろうか?少なくとも「買う意味が分からない」とはならないはずだ。ここに「金融」の面白さがある気がする。*2
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「たしかに上のような条件があるんだったら、5年後に10万円もらえる券を30万円で買うのも悪くないわけだな。他にも例えば自分が全然好きでもない絵画を高額でもいいから買いたくなることもそういう理由で起きたりするわけだな。直接的な便益だけで物の欲しさが決まると想定すればいいってわけではなくて、もう少し考える必要があるわけね」
学部4年でマクロ経済学を勉強しているときにこのことに気づいてから、マクロ経済学の理解が進んだ記憶がある(ミクロ経済学で出てくる単純な純粋交換経済のセッティングではこういうことって起きないから、上のことが分からず困っていたのだと思う)。
この話を思い出すと「これが分かってからマクロの勉強が進んだなぁ」と懐かしくなると同時に、いまでも反射的に「普通に考えて30万円で買うわけねーじゃん」と言いたくなる気もしてきて、
「金融の領域は簡単に不思議なことが起きるな。そうすると例えば国の借金に関する議論とかも、"普通に考えて借金をしつづけることは不可能だよね”みたいに言ってしまうのは危険だよな」のように、「金融」に関わる領域では特に"普通に考えて”には注意しないとだなと思ったりもする。
この話はお気に入り。*3
Fin.