3つの同じエピソード

高3の冬に骨折してしまい、一ヶ月くらい家で安静にしなくてはならない時期がありました。そのとき、ただただ暇で、家においてあった英治出版(父の出版社)の本を本格的に読むようになりました。

それ以降、英治出版の本は色々と読みましたが、いまでも思い出すエピソードが3つあります(本当はもうちょっとあるけど)。その3つはどれも同じことを伝えようとしていると思っていて、今回はそれを紹介しようと思います。

僕にとって大事な3つのエピソードを記録しておくような記事です。

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1:最初のエピソード。これはどの本の一節だったか忘れてしまったので、正確には引用できませんが、だいたいこんなかんじでした。




ある日私は、クライアントとのミーティングに臨んでいました。会議室には6人くらいが座っています。私は練りに練ってきた渾身のプランをプレゼンしています。しかし、参加している1人の男性が先ほどからソワソワしています。携帯をいじったり、足をゆすったり。

私はだんだんとイライラしてきました。どうやらこの男性は私の話にはあまり興味がないようです。あまり気分はよくありませんでした。

しかし後日、その男性が私に話しかけてきました。「この前の会議ではソワソワしてしまっていて申し訳ありませんでした。実は娘が病院に運ばれてしまい気が気ではなかったのです」。

 

私はハッとしました。「この人は大変な状況にも関わらず会議に参加してくれていたのか。会議への情熱がないなんて完全な誤解だった。むしろ何よりも会議を優先してくれていたんだ。」

誰かがあなたにひどい対応をしたとき、その人の背景にはこの話のように何かがあるかもしれません。






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2:次のエピソードです。これもどの本の一節だったか忘れてしまったので、記憶を頼りに書いてみます。

 



待ちに待った日が来ました。孫娘のナンシーが我が家に遊びにくるのです。1年ぶりの再会です。

 

やっと会えました。あぁ本当に可愛い。でも、そう思っていられたのは束の間、なんとナンシーは家にきてすぐに怪我をしてしまいました。

大きな病院に連れていかなくてはなりませんが、ここは田舎です。大きな病院なんてありません。ナンシーをすぐに車に乗せて片道2時間半のドライブです。

本当は一緒にトランプをしたりして素敵な休日を過ごすはずだったのに、この日は台無しになることが決まってしまいました。なんたって往復5時間のドライブです。帰ってきたら夜になってしまいます。憂鬱な気分でしたが、なんとか病院に着き、やっと治療が終わりました。

 

そして、帰りの車中。ナンシーも悲しんでいるだろうと思っていると、彼女は思ってもいないことを言い出しました。「今日はおじいちゃんとおばあちゃんと車の中でいっぱいお話できて楽しかった!毎年こんな風にすごせたらいいのに!」。

私はびっくりしました。

 

自分はなんで気づけなかったのだろう。孫娘と車の中で一緒に過ごすことで例年よりも多くお喋りができたくらいなのに。

物事も捉え方は、単純な捉え方だけがすべてとは限りません。





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3:最後のエピソードです。これはどの本だったか覚えています。坂之上洋子さんの「犬も歩けば英語にあたる」です。本の中で紹介されている物語の一部を簡単に編集する形で引用します。*1




あるさすらいの2人の天使が、お金持ちの家に泊めてもらうことになりました。その家族は部屋をあけがうことを断り、2人に天使に冷たくて暗い地下室をあてがいました。その夜、何を思ったのか年老いた天使が壁に空いていた穴をこっそりと直してあげました。

若い天使が「どうしてそんなことするの?」と聞きました。すると、年老いた天使は「ものごとは、見えている通りとは限らないんだよ」と答えました。

次の日、2人の天使は、今度は貧しいけど優しい家族に泊めてもらうことになりました。一晩を過ごして起きると、その家族は泣いていました。彼らの大事にしていた牛が死んでしまっていたのです。

 

若い天使は「どうしてこんなことを起こさせたの?」と年老いた天使に聞きました。すると、年老いた天使は「ものごとは、見えている通りとは限らないんだよ」と答えました。

「最初の家で私は、壁の穴の奥に金が眠っていることに気づいたんだ。だから彼らが気づかないように穴を直したんだよ。今回の家族については、実はあの夜、妻のところに死神がやってきたんだ。だからその身代わりに牛を死神に渡したんだよ。」

「ものごとは、見えている通りとは限らない」
Things aren't always what they seem.





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いかがだったでしょうか?
3つとも大事な同じメッセージを伝えてくれているように僕には思います。

誰かに対して、「なんでそんなことするんだよ...」と思うことってどうしてもあります。そういうときに、これらのエピソードを思い出すようにしています。そして、後からいつも「思い出して良かったな」と思っています。

「物事はいつも見えている通りとは限らない」と思ってその可能性を考慮しながら対応するのと、自分にそう見えているってことを重視して対応するのでは前者の方が好きです。もちろんそれで損をすることもあるかもしれないけど。

父の出版社が出している本からは色々なことを学んできたし、難しい概念も学んできたけど、1つだけ心に深く残っているものを選べと言われたら、「Things aren't always what they seem(ものごとは、見えている通りとは限らない)を選ぶかも。

Fin.

*1:正確には引用元の文自体も、坂之上さんが受け取ったメールに載っていたものの意訳らしいです。