前編はこちら
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次に論理についてやっていきます。
論理について「ちゃんと理解できた!」となるのはこの記事では無理ですし、授業を理解するにあたってはその必要もあまりないです。やなどの記号が出てくる文を読めるようになることを目標にします。
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命題とは、「真であるか偽であるかのどちらかである文」のことです。
例えば、「はより大きい」は命題ですし、「1は100より小さい」も命題です。前者は真である命題であり、後者は偽である命題です。「猫はかわいい」などは真偽が客観的に定まるものではないので命題ではありません。ただし、「円周率を3.14...を表したときの88京333兆1000億桁目は7である」という文は「真か偽のどちらかである文」という意味では命題です(実際に答えを出すのがほぼ不可能であっても)。*1
なお、「は3より大きい」はに何であるかによって真偽が変わってしまい、これ自体は命題ではありません。しかし、「すべての(for all)」という意味である「」を用いて、「」という文を考えたら、これは、すべての自然数に対してはより大きいという意味であり、真偽が定まるのでこれは命題です(この命題は真です)。
また、「あるーーが存在する(there exists)」という意味であるという記号を用いると、「」のような命題を作ることができます。これは、「(少なくとも1つ)ある実数が存在してを満たす」と主張しています。この命題も真です。
いくつか例を出してみます。
すべての実数に対してが成り立つと主張しており、などの実数はを満たさないため、これの命題は偽です。
すべての自然数に対してが成り立つと主張しており、この命題は真です。
という集合に属するすべてのに対して、が成り立つと主張しており、がの場合にもがの場合にもは成り立っているので、この命題は真です。
少なくとも1つの自然数に対して「」が成り立つと主張しており、そのような自然数は存在しないので、この命題は偽です。
以下の命題の真偽を答えよ。
(1)
(2)
(3)
答え:(1)については「実数全体からなる集合」に属するすべてのについてが成り立つと主張していますが、例えばとしてを考えるとは成り立たないので、という命題は偽です。
(2)は真、(3)は偽です。(3)についてはとしてを考えるとが成り立ちません。のときは1つでも成り立たないとダメなので偽になります。
以下の命題の真偽を答えよ。
(1)
(2)
(3)
(4)
答え:(1):真、(2):真、(3):真、(4):偽
(5)
(6)
(7)
(8)
答え:(5):真、(6):真、(7):偽、(8):真
(9)
(10)
(11)
(12)
答え:(5):偽、(6):真、(7):真、(8):偽
(11)についてはとしてを考えるとが成り立つのでこの命題は真です。(12)についてはという集合に、は属さないことに注意してください。つまり、には以外の実数はすべて属していますがは属しておらず、この集合のどの要素についてもは成り立たないので、この命題は偽です。
なお、ここではやという記号を使っていますが、の代わりに言葉で「for all」と書いたり「for any」と書いたり「for every」と書いたりすることもあります(allとanyとeveryのどれを使うかはニュアンスの違いです)。また、の代わりに「there exists」と書くこともあります(むしろ宿題の回答などでは、for all やthere existsのように言葉で書く方がformalで望ましいです)。
以下の命題の真偽を答えよ。
(1)For any
(2)For all
(3)There exists
(4)There exists
答え:(1):真、(2):偽、(3):真、(4):真
(4)ではではなくを用いていますが、これはと書くときにとのどちらを使っても同じことだったように、で書いたときと同じです。
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次に、とを組み合わせた命題を見てみましょう。
これは「という集合に属するすべてのに対して、に属するあるが存在して、が成り立つ」という意味です。
この命題は真ですが、どう確かめるかというと、まずがのとき、後ろの部分はとなりますが、これは成り立っています。次にがのとき、後ろの部分はとなりますが、これも成り立っています。したがって、に属するすべてのに対して、が成り立っていると確認できたので、この命題は真だと分かります。
という命題の順番を入れ替えて、
としてみたらどういう意味でしょうか?
まず確認ですが、「」で1つの命題です。そして構造としては、に属する少なくとも1つのに対して、「」が成り立つとなっています。「『』が真となるような実数が1つはあるぜ!」ということです。
そして、そのつとして例えば、が考えられます。に対してはは成り立っているため(としてを取ってきた場合はが成り立ちますし、としてを取ってきた場合もが成り立つからです)、「」は成り立っている(真である)と分かります。もちろんやを挙げてもよかったですが、「少なくとのが存在して」ですから、を挙げれば示したことになります。
のパターンも確認しましょう。「少なくともつのが存在して、そのに対してが成り立つ」と主張しています。意味を考えればこの命題は偽だと分かります。
そんなテキトーな話では納得できないという方は、色々な示し方がありますが、背理法でやってもいいと思います。仮にこの命題が真だとしましょう(そのように仮定してみましょう)。すると、あるとあるが存在して、それらに対してが成り立っていることになります(そのような,は特別に注目しているものであるため"チルダ"と呼ばれるマーク上に付けてみましたが、別に付けなくもいいです)。
はに属しているためです。またはに属しているため(とのどちらであるかに関係なく、に属しているという情報から)だと分かります。とから、だと分かりますが、これは先に想定していたに矛盾します。*2よって「仮にこの命題が真だとしましょう」とした部分での想定はまずかったと分かり、ということはこの命題は偽であると分かります。
以下の命題の真偽を答えよ。
(1)
(2)
(3)
(4)
答え:(1):真、(2):偽、(3):偽、(4):偽
例えば(4)は「任意のに対して『任意のに対して』が成り立つ」のように入れ子のような構造として捉えても良いですが(そちらの方が正確ですが)、「任意に取ってきたとそれと同時に任意に取ってきたに対して、が成り立つ」のように、とを並列なものとして見てしまって大丈夫です。
実際、「」の代わりに「for all」を用いる場合には「For all ,for all 」と書かずに、「For all ,all 」のように「対して」の意味を持つ「For」は1回だけ書くことがほとんどです。また、「For any ,any 」と書くこともありますし、「For all , 」のように2つの目の「all」を省略することもあります。
やの記号を使うと複雑な構造の命題を作ることができました。これから紹介する、、、、などを使うともっと多くの表現ができるようになります。
日常言語における「ではない」という単語は、ある文にくっつけるとその文を否定するような新しい文を作ってくれます。は日常言語の「ではない」のような働きをする論理記号です。そして発音も「ではない(でない)」です。は、命題に対して新しい命題「」を作ってくれます。が真な命題であるとき、「」は偽な命題になり、が偽な命題であるとき、「」は真な命題になります。例えば、という命題は偽ですが、「」という命題は真です。「」は「ではない」と読みます。
は日常言語の「かつ」のような働きをする論理記号です。命題と命題に対して新しい命題「」を作ってくれます。とがともに真な命題であるとき、「」は真な命題になり、それ以外のとき「」は偽な命題になります(これは日常言語の「かつ」の働きと一致していると思います)。という命題は、2つの命題とをでくっつけて作った1つの命題であり、「3≥1かつ2≥0」を読みます。が真であり、も真であるため、も真だと分かります。
以下の命題の真偽を答えよ。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
答え:(1):真、(2):偽、(3):真、(4):偽、(5):真
最後の命題は、という命題にをつけて作った命題です。をとおくと、という構造になっています。ここでは偽ですから、は真となります。
は日常言語の「または」のような働きをする論理記号です。命題と命題に対して新しい命題「」を作ってくれます。との少なくとも片方が真なとき、「」は真な命題となり、それ以外のとき(つまり、両方とも偽のとき)「」は偽な命題になります。日常言語の「または」の感覚とは少し異なっているかもしれませんが、論理記号のについてはとが両方真なときもは真になります。「tex:3≥1 \lor 1≥0]は「3≥1または1≥0」と読みますが、これは真な命題です。は日常言語の「または」と同じような働きをしますし、発音が同じなので言葉で言われたときはどちらを指しているか分かりませんが、あくまで論理記号で、その働きは上で説明した通りです。
以下の命題の真偽を答えよ。
(1)
(2)
(3)
(4)
答え:(1):真、(2):偽、(3):真、(4):偽
は日常言語の「ならば」のような働きをする論理記号です。命題と命題に対して新しい命題「」を作ってくれます。「」という形式の命題がどのようなときに真になるかには少し注意が必要です(日常言語の「ならば」と感覚が違うはずなので)。との少なくとも両方が真なとき、「」は真な命題となります。また、が偽であるときは、の真偽に関わらず「」は真な命題となります。が真でが偽なときのみ「」は偽な命題になります。
「」という命題は、「は以上、ならば、は以上である」と読みますが、この「ならば」は日常言語の「ならば」ではなく論理記号のであり、この命題はの部分が偽であるため真になります。
以下の命題の真偽を答えよ。
(1)
(2)
(3)
(4)
答え:(1):真、(2):真、(3):真、(4):偽
(1)と(2)はノータイムで答えましょう。が偽のときの真偽に関わらずは真になるので、後ろのやの部分を見るまでもなく真だと判断できます。(3)や(4)のは、の部分が真であるため、の部分を見る必要があり、の部分が真のときは真、の部分が偽のときは偽であると判断できます。
一通り説明が終わったので、もう少し問題をやりましょう。基本的には日常言語と同じように捉えれば良いですがが出てきたときと、両方真である命題に対してが使われているときには、日常言語とは感覚が異なり得るので注意してください。
以下の命題の真偽を答えよ。
(1)
(2)
(3)
(4)
答え:(1):偽、(2):真、(3):真、(4):真
(5)
(6)
(7)
(8)
答え:(5):真、(6):真、(7):偽、(8):偽
実はここまでの内容でかなり多くのことが表現できるようになりました。例えば次の命題はどういう意味でしょうか?また、その真偽はどうなるでしょうか?
[ ] []
という命題を考えましょう。これ全部でつの命題です。どうやって真偽を判断したら良いでしょうか。こういうときは全体の大きな構造を抑えるのがオススメです。[ ]の部分も1つの命題ですからこれをとおき、[]の部分をとおくと、大きな構造としては、になっていることが分かります。そしたら後はとの真偽をそれぞれ見れば良いです。もも真であることが分かりますから、この全体の命題は真な命題と真な命題をでくっつけたものだと分かるので、全体の命題は真になります。
もうつ見てみます。
[ ] []
これも同じように考えれば、[ ]の部分が偽、[]の部分が真だと分かるので、「[ ] []」という命題は真だと分かります。
次にもう少し複雑にします。
For any [ ]
任意の正の実数に対して [ ]が成り立つという命題ですが、これは真になります。としてを考えても[ ]は成り立ちますし、他にとしてどんな正の実数を考えても [ ]が成り立つ(真になる)からです。
For any [ ]
だとどうでしょうか?これはのときと違って偽になります。例えばとしてを考えると [ ]は成り立たないからです。
もちろん、
There exists [ ]
だと真になります。例えばとしてを考えれば[ ]が成り立つからです。
For any [ ]
はどうでしょうか?これは偽です。
対して
There exists [ ]
は真です。としてを考えればいいからです。
For any [ ]
は真になります。確認してみてください。
同じようなかんじですが、
For any [ ]
のような命題には注意が必要です。
主張としては、すべての実数について[ ]という命題が成り立っていると主張しています。結論としてはこの命題は真になりますが、丁寧にその理由を見てみます。まず未満の実数については[ ]という命題は真になります(の部分が偽であるため)。次に以上の実数についても[ ]という命題は真になります( もも真であるから)。以上より全体の命題は真になります。
また、
For any [ ]
は真になります。これはどんな正の実数について考えてもの部分が真になるため[ ]が真になるからです。全ての正の実数に対して [ ]はたしかに成り立っています。
以下の命題の真偽を答えよ。
(1)For any [ ]
(2)For any [ ]
(3)For any [ ]
(4)For any [ ]
答え:(1):偽、(2):真、(3):真、(4):偽
最後のは少し難しいかもしれませんが、としてを考えると [ ]は成り立っていないことが分かります。なお、(4)の"For any"が"There exists"であればこの命題は真になります(例えばとしてを考えれば良いから)。
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ここで教科書を読むときに注意が必要な表記について紹介します。
For all (with )
のように"with"を使った文が出てくることがあります。
これは、
全ての実数(ただし以上)に対して成り立つ。
という意味であり、この命題は真です。
"with"を使わずに同じことを書こうと思ったら
For all
とすれば良いです。
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以上で論理の基本については終わりです。
論理記号を使って複雑な構造も表現できるようになったので、のような単純な集合の指定以外にも色々な集合の指定ができるようになりました。
例えば、は自然数の中で | の後ろの条件を満たすもの全体からなる集合でしたが、と書いたらこれは自然数の中でという条件を満たすもの全体からなる集合を表します。
もっと複雑に、などの表現もできます。この集合は自然数の中でを満たすもの全体からなる集合ですが、になります。だとこれはになります。確認してみてください。
以下の文はどれも正しい文です。1つずつ正しいことに納得してください。
(1)
(2)
(3)
(4)
最後のは少し難しいですが、例えばとしてを考えてみると、これはという条件は満たしません、すなわちは真ではないです。としてやを考えても同じです。との場合はは成り立ちます。このように考えると分かると思います。
なお、のような表記をすることもあります。| の前に書いてあるのが単純なになっていることに注目してください。このは| の前の部分においては特にどの集合に属するかが指定されておらず、範囲はなんでもいいというかんじです。ここは感覚で慣れるしかありませんが、範囲が指定されていない何でもいい対象物の中で、という条件を満たすもの全体からなる集合というかんじになります。したがって、です。
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最後に「部分集合」と「べき集合」という概念を紹介します。
まずは部分集合についてです。例を出すと、集合は集合の部分集合です。集合も集合の部分集合です。
集合Aが集合Bの部分であるとは、「全てのに対して『』」と定義されます。少し気持ち悪いかもしれませんがこのも特に範囲は指定されておらず、すべての対象物に対して『』が成り立つとき、集合Aを集合Bの部分集合と呼びます。
「集合は集合の部分集合である」を定義にしたがって確認してみましょう。たしかにどんなものを考えても、それがに属している場合はにも属しているので、を満たしますし、それがに属していない場合でもを満たします。よってはの部分集合です。
また、この定義にしたがえば、自身もの部分集合になります。なお、注意すべき点として空集合もの部分集合になります。なぜかというと、すべてのものについて、が成り立つからです(「の前の部分が必ず偽であるから)。空集合はすべての集合の部分集合です。
定義は少しややこしいかんじでしたが、「集合Aに属しているやつらがどれも集合Bに属していれば集合Aは集合Bの部分集合になる」と簡単にイメージで捉えてしまえば大丈夫です。
の部分集合は4つで、
、、、です。
以下の文はどれも正しい文です。1つずつ正しいことに納得してください。
(1)はの部分集合である。
(2)はの部分集合である。
(3)空集合はの部分集合である。
(4)はの部分集合ではない。
いま見た「部分集合」という概念を使って「べき集合」は定義されます。
集合Aのべき集合とは、集合Aの部分集合全体からなる集合です。
つまり、のべき集合は、
という集合です。
なお表記として、集合Aのべき集合はと書きます。
先ほどの例でいえば、
です。
この概念は定義自体は簡単ですが間違いやすいです。
例えば、はのべき集合には含まれません。
べき集合はあくまで部分集合全体からなる集合であり、その要素は集合です。
ではありますが、です。
つまりはのべき集合に含まれます。
また、ものべき集合に含まれます。
以下の文はどれも正しい文です。1つずつ正しいことに納得してください。
(1) ここで。
(2) ここで。
(3) ここで。
(4) ここで。
また、集合Aが集合Bの部分集合であるとき、と書きます。例えばです。また、です。
ここで少し難しいですが、とも確認してみてください。また、閉集合[0,1]もの部分集合です(昔僕はこれが分からないで先生に質問したら"当たり前のこと聞くな”と怒られてしまいましたが、結構難しい気がしています)。まず、についてですが、もも集合であることを思い出してください。のように具体的にイメージしてみるとが分かると思います。
については「に属するやつら(のみ)は全部に属するからだな」と分かります。[0,1]についても同じように閉区間[0,1]がどんなイメージの集合であったかを思い出すと分かると思います。
以上で中編は終了です。お疲れ様でした!
この前と同様にコラムは後編を読むのに必須なのでぜひ読んでみてください。
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コラム:ちょっと復習
復習のために、前編で見た概念の応用例を紹介します。例えばを月日と解釈することにしましょう。は月日と解釈することにします。
このように解釈すると、「年間の全部の日にちからなる集合」はどうなるでしょうか(ただし月日は入れてあげることにしましょう)?
もちろんのように書き出していってもいいのですが、もう少し上手い方法はないでしょうか?まずは次の集合を考えてみます。
。
この集合にはちゃんとやが属しており、いいかんじです。
しかし、などいくつかあり得ないものも属してしまっています。
このあたりの修正しましょう。
表記を簡単にするためにいま作った集合をAで表しましょう。
そして、Aに属するものの中であり得ない日にちの集合をBで表しましょう。
つまり、です。
すると、欲しかった集合は、と表されます。
直積集合と集合の引き算を使って表すことができました。
コラム:とは違う。
集合Aのべき集合をと表すのは、正直いってややこしい表記です。
これは慣れるしかないですが、とは違うので注意してください。前者は肩に乗っているのが単なる数字です。これは中学数学でやった通りただのの乗ですからとなります。
対して後者はの肩に乗っているのが集合ですから、べき集合を表していると分かります。のべき集合はの部分集合全体からなる集合ですから、です。
コラム:とも混同しやすいので注意。
この2つも混乱しがちなので、確認しておきます。
は、に属していますがには属していません。はにもにも属していません。
を思い出してください。またこれをと表記することもあることも思い出してください。
コラム:べき集合って役立つの?
べき集合が役立つのはどんな時でしょうか。応用例を考えてみます。
例1(パーティー)
あなたはクラス全員を「明日ホームパーティーに来てね」と誘いました。自分を除いたクラスメートの集合は でさんからさんまでいます。
もちろん都合がつかない人もいるでしょうから、全員が来てくれるとは限りません。しかし誰がくるかによって明日どのゲームをやるかなどが変わってきます。そこであなたは「誰と誰がきたらこのゲームをやろう」のような計画を立てたいとします。
ここでを「さん、さん、さんの3人だけがパーティーにくる状況」と解釈することにしましょう。すると、べき集合は何を表すでしょうか?
実はこの集合は、ぴったりと「明日のパーティーに誰がくるかのあり得るパターンすべてからなる集合」になっています。もちゃんと入っていますし、さんだけが来るようなもちゃんと入っています。また、もの要素ですがこれは「誰もこない状況」と解釈されます。反対に「全員が来る状況」と解釈されるもこの集合に入っています。
例2(赤点)
あなたは来週5教科のテストを受けることになっています。それが終わったら長期休暇です。しかし、赤点を取ってしまった場合には補習があり予定を変更する必要があります。「国語と理科が赤点だったらこうしよう」のように状況ごとの計画を立てておく必要があります。
として教科の集合を作ります(maはmathを表しています)。このようにしたとき、べき集合は何を表すでしょうか?
を「数学と英語だけが赤点になった状況」と解釈すれば、実はという集合は「ありうる全ての赤点教科のパターンからなる集合」になっています。は「国語だけが赤点になった状況」と解釈されこれもちゃんと入っています。自分はこの集合の要素それぞれに対して計画を立てればいいことになり今回の文脈において役立つ集合になりました。
例3(ワクチン)
この例は重要です。あなたは現在流行している感染症のワクチン担当大臣で、国民にワクチンを打ってもらうための様々な施作をする必要があります。
現在のワクチンの接種状況を確認してそれによって今後の計画を決めます。ここで国民の集合をとします。例えばを「1さんから3さんまでの国民だけがワクチンを接種した状況」と解釈すると、先ほどと同じようには「全てのありうるワクチン接種状況からなる集合」になります。自身もこの集合に属しており、「全員がワクチンを接種済みの状況」と解釈されます。もに属していて、「1さん以外の全員がワクチンを接種した状況」と解釈されます。
場合によってはを用いてありうる状況をすべて考慮するのが妥当なケースもあるかもしれませんが、今回は「ワクチンを打った人数は少なくとも1000人はいるし、多くても600万人だな」と分かっているとしましょう。のままでは、誰もワクチンを打っていない状況と解釈されるなども入ってしまっています。そこで、に属するものの中から、「全員が打っている」、「誰も打っていない」、「1さんと2さんだけが打っている」のような今回持っている情報のもとでありえないものを排除した集合を指定できないでしょうか?
つまり、の要素の中で、その集合に属している個人の数が1000以上600万以上であるもの全体からなる集合を作れないでしょうか?
実はそのような集合はと表現できます(なお、ここに重要な表記が出てきています。集合に対してはの要素数を表します。つまりのときです。)。
についてよく見てみましょう。この集合は、に属する(これは抽象的にを使っているだけででもなんでもいいです)の中で|の右側の条件:を満たすもの全体からなる集合です。つまり、集合に属するものの中で、(それをBで表したときに)が1000以上600万以上という条件を満たすもの全体からなる集合を表しています。
したがって、は上の集合に属します。しかし「誰もワクチンを打っていない状況」を表すは上の集合には属しませんし、という「さんからさんだけが打った状況」も属しません。
今回の情報のもとで欲しかった集合:
。
以上の例のように、「べき集合」を用いると色々な表現をできます。
後編はこちら:今度更新。