松島先生の授業で面白かったこと(メカデザ)

松島先生の授業で面白かったことを書いておいたメモが出てきた。

僕はメカニズムデザインが専門ではないけど、いくつか書いておこうと思う。先生の授業中のコメントがメインです。ただし僕の解釈が入っているところもあり、先生が言った通りにメモしているわけではないのでご了承ください。

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・市場(market)も情報の観点から見ることができる。marketにおいて人々の選好の情報は隠されているが(お互いの選好についてはわかっていないが)、結果として効率的配分が達成される。「オークション」を使えば人々の選好についてよく分かっていなくても上手いこといくのと同じように、人々の選好が分からない状況でも、市場という装置を導入すれば効率的配分を達成できる。

→価格理論の話とつながって面白かった。

・common priorの仮定(自分のタイプ含めて何も情報を持たなければ各プレイヤーはstate of the worldについて同じ確率を予想するという仮定)について。common prior ではなくheterogenousなケースを考えること(共通ではなく人によって異なると想定すること)はあまりないが、バブルとかを考えるときにはheterogenousなbeliefを仮定するのは悪くない。common priorだと「あの人は値段が上がると予想している。ということは自分とは違う情報を何か持っているんだな」みたいになるけど、heteroな場合には「あの人は将来の値段の予想について楽観的だから、ああやって予想しているんだな」みたいになる。heteroを仮定することで説明しやすいこともある。

→「common prior」の仮定は何も考えずにいつも置いていたので新鮮だった。

・2位価格オークションの均衡での行動を分析するには、タイプに関する情報を考えなくても良い。だけど、期待収入とかについて考えるなら、必要になってくる。

→「まぁたしかに」と思った。

・人々のタイプの分布について対称性を仮定するのは妥当かについて。例えば実際に分析しようとしているのが「入札者たちは東京都に住んでいる」という情報しかない場合には同じ母集団から取ってこられた人々と考えられるから妥当であるが、高齢者と若者がオークションに参加するという状況の分析ではあまり妥当とは言えなさそう。

→「モデルの仮定についてそう考えるんだ」と思った。

・メカニズムとしての「オークション」とゲームとしての「オークション」は異なる概念だから注意。例えばゲーム理論の教科書において、ゲームの形式でオークションが描かれていることがあるが(プレーヤーの集合がNで、戦略がーーで、効用関数がーーで、など)、あれは「オークションというメカニズム」を記述しているのではなく「オークションというメカニズムに直面している人たちの心理的状況」を記述している。同じオークションに直面していても直面している人のリスク態度などによってそこに発生する「ゲーム」は異なりうる。

→これは他の教科書読むときにすごく役立った。ある教科書では「一位価格オークション」というセクションにゲームが書いてあって、違う教科書では「一位価格オークション」というセクションにメカニズムが書いてあったり混乱していた。

・例えば「一位価格オークション」について戦略形ゲーム(N,A,u)の形式で分析することがあるが、あれはカルテルのような状況の分析になっている。つまり、何かしらの事情でオークションの参加者がお互いの評価額を知り合っているような状況での分析として妥当。不完備情報のゲームとして書いている場合は一般的に想像するお互いに評価額が分からない状況の分析になっている。

→「あ、たしかに」と思った。あと、ゲーム理論の教科書の最初の方に(戦略形ゲームの定義をやったあとくらいに例として)オークションが戦略形ゲームで書かれているのを何も考えないで読んでいたけど、よく考えたら「効用関数をお互いに知り合っている(もっといえばcommon knowlegeになっていると想定するのが戦略形ゲームでは普通)」と想定しているのはオークションなのに変だと気づくべきだった(そして解釈を上の先生の説明のように考えるべきだった)と思った。

・1位価格と2位価格では同じ「bidをする」という行為を人々は行うわけだが、それを行う上での「頭の働き」はだいぶ違う。一位価格では「相手の出方に対しての予想を立てる」という頭の働きが必要になる。

→「頭の働き」って観点は面白いなと思った。実際の人間の頭の働きにも思いを馳せているんだなと思った。

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以上です。

あとは、「内部化」についてその凄さを掴めたのはめちゃくちゃ大きかったけど、これはここに書くのは難しいので省略してしまいます(→やっぱり内部化について感覚を掴めたのが一番の収穫であり凄く感動したので、メカデザの授業とは少し文脈を変えつつも別記事にしました:税金を「調和」という観点から見てみる)。

Fin.