規範的な議論の2つの枠組み

*この記事は社会的選択理論の基本的な知識を前提にします(今回関連してくるのはutilitarianismとアローの不可能性定理あたりです)。今回は枠組み間の整理を行うのでいつもより前提知識は必要かもしれないです。 今回関係を明らかにしたい2つの枠組み 社会…

社会的選択理論のタームペーパーで取り組んだ「Population Ethics」の紹介。

*この記事では、学部上級レベルのミクロ経済学の知識を前提として、僕がタームペーパーで扱った「Population Ethics(人口倫理)」の研究について紹介します。僕のタームペーパーは既存の論文の主張に反例を示して修正を加えた修正論文なので、基本的には分…

「A/Bテスト実践ガイド」のメモ(1章、2章)

効果検証の本として、「A/Bテスト実践ガイド」が良書らしいので勉強してみることに。どこまで読み進めるかは分からないけど、とりあえず先ほど読んでみた1章と2章について、面白いと思ったこと・考えたことなどをメモしておきます。 自分が忘れた頃に見返…

「マーケット感覚を身につけよう」を読んでトレーニング。

数年前に読んで面白く思った本に、ちきりんさんの「マーケット感覚を身につけよう」がある。特に「航空会社の競合ってどこでしょう?」という話が面白かった。例えばJALの競合としてすぐにANAを思いつくかもしれないけど、それだけじゃないよねという話。例…

中学校のベランダとaggregation(集計)

中学校の3年間で一番衝撃だったことは何かと思い返してみると、教室におけるあの場面だったかもしれない。中学一年のときの教室はたしか4階にあった。たぶんあの日は入学してからそこまで日が経っていなかったんじゃないかな、休み時間に教室のベランダで…

データ分析(計量経済学)の教育について思うこと。

例えば、あなたは全国展開する美容院(ただしその企業は他の事業も展開している)のデータ整備を担当することになったとする。具体的には、関東にある50店舗を総合的にマネジメントをしている担当者のために、データを揃えることになったとする(データを揃…

学問に対する向き合い方のシフト

M2になってから意識的に学問に対しての向き合い方を変えてきて、なかなか難しさもあったけど、新しいステップに入った気がするのでそれについて書いてみようと思います。ただ、以前にも大きく向き合い方が変わった瞬間があって、今回の変化を語る上ではそこ…

社会的選択理論の研究について教わったことメモ

*この記事は中級以上の社会的選択理論の知識を前提とします。指導教員とのミーティングなどで「あ、これは学びになるな」と思ったことをメモしておきます。以下は基本的に手法としてはcharacterizationについてなので、社会的選択理論に馴染みがない(or 不…

修論指導は”映画鑑賞”?

指導教員の先生とのミーティングにおいて、映画を勧めてもらった。社会主義の未来社会を描いた映画で、社会的選択理論のヒントになりそうとのことらしい。さっそく勧められた映画「giver」を見てみた。この記事では、それを見て面白いと思ったことや考えたこ…

同期の修論に向けての発表を大量に聞いて思ったこと。

自分は発表しなかったのだけど、今日は13時開始で大学院同期の修論に関する発表を7つ聞いてきた。お互いに修論に向けての現状について発表しあってコメントや質問をもらおうみたいなかんじで、僕みたいに聞くだけの人も参加しつつ1つの部屋に集まって18時半…

Pazner and Schmeidler(1974)の紹介。

Pazner and Schmeidler(1974)は、無羨望という公平性の概念とパレート効率性という効率性の概念の関係を取りあげた、たった2ページの論文です*1。(純粋交換経済においてはこの2つの概念を満たす配分は常に存在するのですが、)この論文は労働を入れ込んだ経…

economyに対してsetを定めるかorderingを定めるか。

*この記事は社会的選択理論の知識を前提にしています。あるエコノミーが与えられたときに、そのエコノミーにおける配分の集合を、feasibleな配分の集合をとしておく。この設定のもとで、論文によっては上のordering(順序)を考え、論文によってはの部分集合…

「幸せのための経済学」を読んで。

前に読んで挫折した「幸せのための経済学」を読みました。本はこんなかんじでコンパクト。数式は登場せずに社会的選択理論*1における規範寄りのテーマを一通り説明してくれています(ただし正直な感想としては難易度はかなり高くて読みこなすのには一定以上…

ゲーム理論について学部時代に見えていなかったこと(1)

*この記事は中級レベルのゲーム理論の知識を前提としています。規範的な分野を最近やっていることで(あとはゲーム理論の応用分野である租税競争の授業を履修したことで)、ゲーム理論の規範的評価の部分について解像度が上がってきた。例えば標準形ゲームの…

帰り道の空が穏やかだったよ!

「あ、今日の空は穏やかでいいかんじだな」と大学を出たときに思ったので、帰り道(本郷キャンパス〜上野駅)の写真を撮りながら歩いてみました。散歩のお裾分け的な記事です。・・・・ ・経済学研究科の建物を出てすぐのところ。 ・上野公園に入った。この…

ケーキをどう3等分するのが"公平"か?

ある漫画で、「目の前にあるホールケーキを公平に3等分してください」というお題が出されていた(その漫画においては特になんの捻りもなく120度ごとに切るのが正解とされていた)。その漫画(「ケーキが切れない非行少年たち」)は今回の記事とは異なる重要な…

祝!このブログで100記事達成!

昨日の投稿(2022年8月31日)がちょうど100記事目でした。去年の12月から始めたブログなので思ったより早いペースで100記事達成することができました。「読んでるよ!」とメッセージをくれたり、こっそりと読んでくれていた読者の皆さんありがとうございまし…

613号室の猫。

*このブログ初めての小説です!なおタイトルの613号室は東大経研のM1が共同で使うそれなりに大きな部屋で、ここが舞台です。吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。なんでも大きくて赤い門の端でニャーニャー泣いていたこと…

「経済学は一旦全部忘れよう」

大学院の同期には修士が終わっても経済学を続ける人が多い。そして、もしかしたら彼らと一緒に何かしらのテーマについて考えることが将来あるかもしれない。その時には、この記事のタイトルの言葉を伝えたいなと思っている(経済学の観点からの専門的コメン…

Bossert&Fleurbaey(1996)の紹介記事の補足。

先日紹介したBossert&Fleurbaey(1996)の証明などを補足しておきます(また、追記でこの論文を発表した時に指導教員から貰ったコメントについても載せておきました)。論文には載っていない証明もあるので少し間違っているところもあるかもしれません。ちなみ…

自分の感性に合った言葉をファイリング。

普段は大学院で経済学をやっているけど、美意識とか感性をもっと磨きたいので、「いつまでも眺めていたいなぁ」と思える言葉に出会ったらこの記事に随時ファイリングしておこうと思う。 選定基準 ・自分のスマホで表示した時に長さが1行以内。・好きな感性の…

社会を構成する個人の集合について(社会的選択理論の文献を読むときの整理)。

*この記事はsocial choice theoryの文献を読む人向けの記事です。他の経済学の分野でもそうだけど、社会的選択理論においても「社会を構成する個人の集合をとする」みたいにモデルをセットアップすることがある。ただし文脈によってはこのがその論文内でずっ…

Bossert&Fleurbaey(1996)の紹介。

「環境(家庭環境など)が良かったため、努力は少ないけどある程度の課税前の収入がある人」と「環境(家庭環境など)は悪かったが、努力が多いことで同じだけの課税前の収入がある人」がいた場合、この2人に対する所得税は同一であるのが公平だろうか?家…

なんでリンゴが工場になるわけ!?

*以下は僕がとても苦手なマクロ経済学についてなので、間違っていたり逆に認識が同じだったりしたら是非コメントなどで教えてほしいです。マクロ経済学をやっていて学部の時からずーーーっと困っていたことがあった。モデルはなんでもよいのだけど、よくある…

守破離はいいと思うけど一番最初は「守」ではないと思う。

僕は独自のやり方を採用するのが好きな人間です。そうするとよく「守破離(しゅはり)という言葉があってだね。まずは既存の型を守る。そして次に自分なりの工夫をして型を破る。最後に型から離れて独自のやり方を創る。この順番での成長が大事で、最初から…

アニメ『サイコパス』1話〜5話を見て考えたこと

「社会的選択理論に興味があるなら面白いかも」と勧めてもらった、アニメ『サイコパス』の1話〜5話を見てみました。未来都市が舞台で、主人公は警察に配属された新人です。「犯罪係数(犯罪をする可能性が高さを示す数値だと思われる)」と呼ばれる数値が基…

論文の長さに関して心に残っている言葉。

あれは高校の生物の授業だったと思う。DNAの二重螺旋構造を発見した歴史的論文のコピーを先生が配ってくれた。歴史的な論文とのことだったが、なぜか2枚のプリントが配られただけだった。「実際の論文はどうせ膨大なんだろうけど、いま配られたのは要約なん…

補償の経済学(Envy-Free関連のいくつかの配分ルール)

*この記事は中級レベルのミクロ経済学を前提にします。社会的選択理論のスターであるMarc FleurbaeyさんがHandbook of Social Choice and Welfareに書いた「Compensation and Resposibility」を勉強中なので、内容をまとめてみたいと思います。 (この文言は…

VCGメカニズムが正直申告を引き出すことの説明(ちょっと洗練させたversion)。

この記事はVCGメカニズムを学習済みである方に向けて、VCGメカニズムにおいてどうして正直申告が引き出されるのかをプレーヤーの目線に立って説明しようとする記事です。前に同じ趣旨の記事を書きましたが、こちらの方が洗練された説明になっている気がしま…

やっぱこうなるよね〜。

昨日の記事の続きだけど(昨日の記事:えーどうしよう.....。)、弟の誕生日プレゼントが決まりました。いや、色々考えたんだよ。でも、考えれば考えるほど変なやつ選びそうなので、取り敢えず近所のスーパーに行こうかなって。さすがにお菓子15個は多すぎる…